国際税務ニュースレター 2013年7月号「タックスヘイブン課税裁判 納税者勝訴」

国際税務ニュースレター 2013年7月号「タックスヘイブン課税裁判 納税者勝訴」

国際税務ニュースレター 2013年7月号「タックスヘイブン課税裁判 納税者勝訴」

みなさま、こんにちは!

今回の国際税務ニュースレターは

「タックスヘイブン課税裁判 納税者勝訴」

-適用除外準備充足が争点-

です。

シンガポール法人がタックスヘイブン対策税制の適用除外基準のうち実体基準及び管理支配基準を充足するか否かについて争われていた訴訟で、

東京地裁は2012年10月11日、両基準を充たすと判断し、納税者(当該シンガポール法人の発行済株式総数7,800株のうち7,799株を有し、

当該法人の役員を務める個人)への更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す判決を言い渡しました。

この判決に対して課税当局は控訴しましたが、2013年5月29日、東京高裁は東京地裁の判決を全面的に支持する判決を言い渡し、再び納税者が勝訴しました。

この裁判で興味深いのは、裁判所が適用除外の挙証責任は納税者ではなく課税当局にあると判断した点です。

また、適用除外基準の判定は、形式的な契約書等の存在よりも事業活動の実体に基づいて行われるべきであるということが、改めて確認されたと言えます。

1       実体基準の充足の有無(争点1)

(1)実体基準

実体基準の充足には、特定外国子会社等が、その本店所在地国においてその主たる事業を行うために必要と認められる事務所、

店舗、工場その他の固定施設を有していることが必要です(措法40の4③)。

(2)   課税当局の主張と裁判所の判断

課税当局は、シンガポール子会社(A社)が業務に使用していたスペース(机1台分)が、A社の業務のみではなく他社の業務にも使用されていたこと、

及び契約上当該スペースの賃借料に関する条項がなかったことなどを理由に、A社がその事業に必要な固定施設を有していたとは認められないと主張しました。

これに対して裁判所は、A社が現地法人D社に支払っていた業務委託費にオフィススペース賃借料や人員派遣料なども含まれることが口頭により合意されていたこと、

当該スペースがA社の営業活動のために実際に使用されていた事実が認められることなどにより、A社はその事業に必要な固定施設を有していたと判断しました。

2       管理支配基準の充足の有無(争点2)

(1)   管理支配基準

管理支配基準では、事業運営に必要な現地役員や従業員の存在、株主総会の開催場所や役員としての職務執行状況などを総合的に勘案して、

特定外国子会社等がその本店所在地国において、主たる事業の管理、支配及び運営を独立して自ら行っていると認められることが求められています(措法40の4③)。

(2)   課税当局の主張と裁判所の判断

課税当局はS氏(シンガポール居住のA社役員)がA社以外の複数の会社役員を兼務しているうえA社から役員報酬を受領していなかったこと、A社が現地従業員を雇用しておらず、

かつ他社からの人員派遣契約等も存在しないことなどを理由に、A社の管理・支配・運営がシンガポールで独立して行われていたとは言えないと主張しました。

これに対して裁判所は、S氏がシンガポールでA社業務を実際に行っていた事実、及びD社からの派遣社員Lが原告およびS氏の指揮監督の基でA社の業務を行っており、

D社への報告義務がなかったという事実が認められることなどから、A社は管理支配基準を充足していると判断しました。

お見逃しなく!

適用除外基準は、上記実体基準及び管理支配基準の他に、事業基準及び所在地国基準または非関連者基準があります。

これらの基準をすべて満たす特定外国子会社等であっても、一定以上の資産性所得の金額がある場合には、

その特定所得の金額の合計額のうち居住者の特定外国子会社等に対する株式等の保有割合に応じて計算した金額は、その居住者の雑所得の金額の計算上、

総収入金額に算入されます(措法40の4④、措令25の22の2)。

asg

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