国際税務ニュースレター 2013年5月号「外国法人(PE)課税の見直し ~AOAに沿った帰属主義へ~」

国際税務ニュースレター 2013年5月号「外国法人(PE)課税の見直し ~AOAに沿った帰属主義へ~」

国際税務ニュースレター 2013年5月号「外国法人(PE)課税の見直し ~AOAに沿った帰属主義へ~」

日税国際税務フォーラム

国際税務ニュースレター

2013年5月号

今回のテーマ:外国法人(PE)課税の見直し

AOAに沿った帰属主義へ~

平成25年度税制改正の改正項目ではありませんでしたが、今後の国際課税に対する課題として非居住者及び外国法人の課税ベースを現行の総合主義から帰属主義への見直しが検討されています。OECDが承認したアプローチ(Authorized OECD Approach:以下「AOA」という)によりOECDモデル租税条約が改正され、帰属主義による所得算定が「機能的分離企業アプローチ」によると明記されたことが契機となっています。

この見直しが本格的に行われるとなると、我が国の国際課税体系の大改正となります。

1.我が国のPE課税の範囲

各国が租税条約を締結する上で参考とするOECDモデル租税条約ではPE課税について、「何が」所得を稼ぎだしているのかという所得の物理的帰属に着目した帰属主義を採用しています。

一方、我が国ではPE課税について、法人税法141条や所得税法164条に規定されているように「どこで」所得を稼いだかという所得の地理的帰属に着目し、日本で稼ぎ出されたすべての所得を、PEの所在地国において合算して課税するという総合主義を採用しています。

したがって国内法で帰属主義を採用するとしても、国内源泉所得についての規定を、独立企業間原則を厳密に適用している「機能的分離企業アプローチ」による帰属計算に改正することが必要になります。法人税法施行令1767号では部分的にそのようなアプローチが採用されています。

2.OECDモデル租税条約第7条(事業所得条項)の改正

2010年に公表されたOECDモデル租税条約2010年版で第7条(事業所得条項)が改正され、「機能的分離企業アプローチ」に基づきPEに帰属する利得が算定されることが明確化されました。これは、PEの機能を分析した上で資産の経済的所有権、リスクや資本をPEに帰属させ、同一企業の内部取引をあたかも外部取引のごとく認識して、独立企業間価格でその取引等が行われることを前提として計算された所得がPEに帰属するという考え方です。

3.我が国の対応

国内法をAOAに沿った帰属主義に合致させるべく見直しが検討されているのは主に以下の項目です。

  • 「機能的分離企業アプローチ」の採用

  • 単純購入非課税原則の変更(現行法令では、外国法人の日本支店が棚卸資産に関して製造等を行わず単純に国外に譲渡する場合には、国内源泉所得は生じないとされていますが(法令176②)、その単純購入活動からも所得を認識するような改正が考えられます。)

  • 本支店間内部利子・使用料の損金性(現行法令では、本支店間の内部利子・使用料は原則所得として認識されないことになっていますが(法令176③)、内部取引からも所得を認識する、あるいは、PEが内部利子・使用料の支払時に損金算入できることを明確にするような改正が考えられます。)

  • 資本配賦と過少資本税制適用(PEへの合理的な資本配賦とそれに伴う過少資本税制の整備が必要となります。)

なお、派生的な問題として本支店間取引への移転価格税制の適用が考えられます。

お見逃しなく!

・現在改正手続中の日米租税条約では第7条(事業所得)は改正項目に含まれていません。しかし、OECDモデル租税条約の改正を受けて今後我が国との新条約締結や改正交渉による導入が注目されます。

・所得算定に関する詳細な規定は租税条約ではなく国内法に依拠するため、納税者の予測可能性に配慮した速やかな国内法の改正と新たな解釈指針の公表が望まれます。

お問い合せ先:日税国際税務フォーラム

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情 報 提 供 :太陽ASGグループ(グラント・ソントン 加盟事務所)