国際税務ニュースレター:国外財産調書制度の適用開始

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国際税務ニュースレター

2013年9月号

今回のテーマ:国外財産調書制度の適用開始

平成24年度税制改正により創設された国外財産調書制度が、平成25年12月31日時点で有する国外財産から適用されます。

1 国外財産調書制度の概要

国外財産調書制度の提出義務者、調書への記載事項、財産の所在地の判定基準及び国外財産の価額の算定基準は以下のとおりです。

項  目

内     容

提出義務者・提出期限12月31日時点の国外財産価額の合計額が5,000万円を超える居住者(非永住者を除く。)が、翌年3月15日までに提出します。
調書への記載事項・国外財産を有する者の住所及び氏名

・国外財産の種類、用途、所在地、数量、価額及びその他必要な事項

財産の所在地の判定原則として相続税法第10条(財産の所在)の規定に従って判定されますが、有価証券については、平成25年度税制改正により例外的に有価証券を管理している口座の所在地が国外にあるかどうかによって判定することとされました。
国外財産の価額の算定時価又は見積価額によります。時価とは、その年12月31日における財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、具体的には専門家による鑑定評価額、金融商品取引所等の公表する同日の最終価格(同日の最終価格がない場合には、同日前の最終価格のうち同日に最も近い日の価額)などです。

また見積価額とは、その年の12月31日における財産の現況に応じ、その財産の取得価額や売買実例価額などを基に、合理的な方法により算定した価額をいいます。

2 過少申告加算税又は無申告加算税(以下「加算税等」)の特例

修正申告、期限後申告、決定又は更正(以下「修正申告等」)により追加納税を行った場合、

原則として10%又は15%の過少申告加算税若しくは15%又は20%の無申告加算税が課されます。

しかし、当該修正申告等が国外財産に係るものである場合には、

以下に掲げる特例により加算税等が軽減または増額されます。

(1)      国外財産に係る所得税又は相続税についての修正申告等が行われた場合で、

期限内に提出された国外財産調書に当該修正申告等の原因となった国外財産の記載があるときは、

加算税等の金額が以下の算式により計算した金額に軽減されます。

加算税等の金額 = 本来課される加算税等の額 - 追加納税される本税の金額 × 5%

(2)      国外財産に係る所得税について修正申告等が行われた場合で、期限内に国外財産調書が提出されていないとき、

又は提出された国外財産調書に当該修正申告等の原因となった国外財産の記載がないときは、

加算税等の金額が以下の算式により計算した金額に増額されます。

なお、上記(1)の軽減措置と異なり、当該増額措置においては相続税が対象外となっていますが、

これは被相続人による国外財産調書の不提出・未記載の責任を、相続人が負うのは適当ではないと考えられたためです。

加算税等の金額 = 本来課される加算税等の額 + 追加納税される本税の金額 × 5%

3 財産債務の明細書との関係

その年分の総所得金額及び山林所得金額の合計額が2,000万円を超える個人は、

財産債務の明細書を確定申告書に添付して提出する義務がありますが、

国外財産調書の提出を行う場合には、財産債務の明細書への国外財産に関する事項の記載は不要となります。

お見逃しなく!

(1)      国外財産調書への記載事項に偽りがあった場合、又は正当な理由がなく提出期限までに提出しなかった場合においては、

1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられますが、情状により刑が免除される場合があります。

(2)      国外財産調書制度の創設により居住者の有する国外財産の増減が明らかになるため、国外財産について多額の増減があり、

かつ、所得税、相続税又は贈与税の申告が無い場合には、税務調査の対象となることが考えられます。

特に平成25年度税制改正により平成25年4月1日以降は、『日本国内に住所を有する者から日本国内に住所を有しない個人で

日本国籍を有しないものへの相続若しくは遺贈又は贈与』が、国外財産であっても相続税又は贈与税の課税対象となりましたので、注意が必要です。

ご利用にあたって及び免責事項

http://www.wakaba-tax.com/?p=564

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